日本のAI業界におけるAGI開発競争と技術的課題

主要なAI企業が汎用人工知能(AGI)の開発を目指して競争を繰り広げていますが、言語モデル(LLM)中心のアプローチには限界が指摘されています。日本でも政府と企業が連携し、AI技術の発展と社会実装を推進しています。

AGI開発競争の現状と課題

サム・アルトマンやマーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスクなどがAGIの実現に向けて大規模な投資と開発を進めています。特に、OpenAIやMeta、Anthropicなどの企業は大規模言語モデル(LLM)を基盤にAGIを目指していますが、言語能力と知能は異なるものであるとの指摘があります。The Vergeによると、言語は「思考の道具ではなく、コミュニケーションの手段」であり、言語の習得が知能の向上を意味しないとされています。

LLMは膨大なテキストデータを基に統計的相関から次の単語を予測するシステムであり、抽象的思考やアイデアの生成とは異なります。ヤン・ルカン(Meta元AI責任者)は、AGI実現にはLLMではなく、環境から学び人間のようにシナリオを想像できる世界モデル(LWM)が必要だと述べています。

日本のAI政策と産業動向

2025年5月に成立したAI推進法により、日本政府はAIの倫理的かつ安全な発展を目指し、内閣にAI戦略本部を設置しました。2025年10月にはデジタル庁がOpenAIと連携し、行政業務の効率化に向けたAIツール導入を進めています。これにより、2026年度には他の政府部門への展開も予定されています。

企業面では、NTTが2027年までに約8兆円(約590億ドル)を投資し、医療や自動車、金融分野向けのAIソリューションを展開。ソフトバンクもOpenAIとの提携を通じて400億ドル以上の投資を行い、5GネットワークでAI処理を可能にする技術を開発しています。

富士通のマルチAIエージェント協調技術

富士通は2025年12月1日、異なる企業やベンダーのAIエージェントが安全に協調し、変化に迅速に対応できるマルチAIエージェント協調技術を開発したと発表しました。2026年1月からは、理化学研究所とロート製薬のサプライチェーン最適化の実証実験を開始します。

「サイエンス東京はサイバーフィジカルシステム(CPS)研究を推進し、産業バリューチェーン全体の効率化に取り組んでいます。富士通のエージェントAI技術と連携し、サプライチェーン全体の最適化を目指すことで、産業の発展と社会課題の解決に貢献したいと考えています。」
— 藤澤勝樹教授(理化学研究所デジタルツイン研究ユニット)

半導体投資とインフラ強化

Micron Technologyは2025年11月に、西日本でAI向けメモリーチップ製造のために1.5兆円(約96億ドル)を投資すると発表しました。これは台湾以外での先端チップ生産の多様化を目指す動きの一環であり、NVIDIA製AIプロセッサ向けの高帯域幅メモリー(HBM)を製造します。

また、データセンターの熱問題も注目されており、AI処理の増加に伴う冷却技術の重要性が増しています。

今後の展望と課題

AGI実現にはLLMを超えた技術革新と時間が必要であり、OpenAI共同創設者のアンドレイ・カーパシーは「少なくともあと10年はかかる」と予測しています。日本は量子コンピューティングとAIの融合による計算能力の飛躍的向上を目指し、経済復興の原動力と位置づけています。

Anzai Hotaka

10 年の経験を持つコンピュータ エンジニア。Linux コンピュータ システム管理者、Web プログラマー、システム エンジニア。